英語多読の実際:100 万語までにかかった時間、読んだ冊数、続いた人の読み方

多読とは、やさしい英語をたくさん読むことで、英語を英語のまま理解できる力を養う学習法です。大事なのは、背伸びをせず「やさしい」本を選ぶこと。研究でも、ページ内の単語の約 98% を知っている状態であれば、辞書を使わずに無理なく読み進められるとされています(Hu & Nation, 2000)。

ただ、やり方はわかっていても、実際にどれくらいの量を読めばいいのか、何をどの順番で手に取ればいいのか、どこで行き詰まりやすいのかといった点は、経験者の記録を見るのがいちばん参考になります。ここでは、学習者が SNS に残していた多読の記録を、実際の数字とともにまとめました。

100 万語は 1 日 30 分で 1 年

多読の最初の節目としてよく挙げられるのが「100 万語」です。ある学習者は、こんなふうに計算していました。8 割ほど理解できる洋書を、1 分間に 100 語のペースで 1 日 30 分読むと、1 日あたり 3,000 語になります。3,000 × 365 で年間 109.5 万語になり、1 年で 100 万語に届く計算です。この人が挙げていた条件は、自分が好きで純粋に楽しめる本を読むことでした。

実際の記録を見てみると、この計算に近いペースの人もいれば、さらに速いペースで読み切った人もいます。

記録 読んだ量 かかった時間
子どもの多読を保護者が記録 18 シリーズ、計 100 万語 約半年
多読アプリでの聞き読み 441 冊、1,019,733 語 13 か月目
中国の大学院入試の英語で 74 点からのスタート 1 日 1 万語以上、計 200 万語 半年
語彙テストで約 8,686 語からのスタート 60 冊以上、約 600 万語 1 年(1 日 1〜4 時間)

記録から見えること

子どもの 100 万語。 保護者がつけた記録によると、Nate the Great 30 冊、Magic Tree House 28 冊、Dragon Masters 26 冊、My Weird School 21 冊、Dog Man 16 冊、Captain Underpants 14 冊、Press Start 14 冊など、計 18 シリーズを読んで 100 万語に到達しています。ほぼ 1 冊読み終わるごとにクイズを解き、AR 値は 3.5 から 4.9 まで上がりました。1 日に読む 1 冊あたりの分量も、最初の 2,000 語程度から 1 万語以上へと増えていったそうです。

聞き読みで 100 万語。 音声を流しながら目で文字を追う「聞き読み」のスタイルで、441 冊、有効読書量にして 1,019,733 語を読んだ記録もありました。441 回受けたクイズの平均正答率は 96% で、読んだ中で最も長かったのは 20,395 語の Sideways Stories from Wayside School でした。

半年で 200 万語。 中国の大学院入試の英語が 74 点だったという学習者は、単語帳には手をつけず、いきなり文章を読み始めました。半年間、毎日欠かさず 1 万語以上読み続けたそうで、主に読んでいたのは Aeon の記事です。知らない単語が出てきてもその文脈での意味だけを調べ、別の文脈で何度も見かけるうちに自然と定着させていきました。また、毎日いくつか見慣れない構文を抜き出して AI に文法の解説をしてもらい、半年後には学術的な文章もほとんど苦労せずに読めるようになったといいます。なお、語彙数のテストは受けていません。

大人がやさしい読み物から始めた例。 十数年前に中国の大学英語試験(CET-4、CET-6)を試験対策だけでぎりぎり通過したという社会人は、過去に覚えた単語が 4,000〜5,000 語あったとしても、実際に使えるのは 2,000〜3,000 語程度だろうと自己分析していました。そこから Oxford Bookworms のレベル 1〜4 を読破し、レベル 5 の半分まで進めるのにかかった期間が 1 か月足らずです。音声を聞きながら読み進め、知らない単語は前後の文脈から推測しました。その結果、使える語彙が 4,000〜5,000 語ほどに増えた感覚があり、レベル 5 では知らない単語がほとんど出てこなかったそうです。レベル 4 の時点では 1 日 100〜150 ページのペースで読み、話が複雑な Sherlock Holmes は途中で飛ばしたものの、Little Women と A Tale of Two Cities は一気に読み終えています。

レベル 6 のあとの壁。 同じ学習者が Bookworms のレベル 6 まで終えて Harry Potter に挑戦したところ、知らない単語が一気に増えて読むのがつらくなったと綴っていました。この時点での読解語彙は自己評価で 5,000〜7,000 語です。この投稿に寄せられたコメントには、うなずける指摘がいくつもありました。大人が英語の小説を読むときにぶつかる最大の壁は「細部がわからないまま読み進めること」に心理的な抵抗があること、たとえ 2 万語知っていても小説には未知の単語が出てくること、そして英語圏の児童書の語彙は試験対策の語彙とは重ならない部分が多いことなどです。よく「3,000 語あれば Flipped が読める」と言われますが、実際に読んでみると知らない単語がかなり出てくるという声もありました。

2 か月で 21 冊。 IELTS 約 5.0、語彙数約 5,000 語で、仕事や学業を離れて読書に専念していた大人は、Audible の音声を聞きながら紙の本で恋愛小説やミステリーを読み、2 か月で 21 冊(その後 7 月 20 日までに 45 冊)を読破しました。最初の 1 冊には 4 日かかりましたが、やがて 1 日 1.5 冊のペースに上がっています。Audible の再生速度も等速から 1.7〜2.2 倍速まで上げられるようになり、難しめのニュースの聞き取りは 2 割から 5 割へ伸び、文章の 8 割は一度通して読むだけで大意がつかめるようになりました。一方で、語彙数そのものは思うように増えなかったそうです。ただ、本の中で 7、8 回見かけても調べずにいた単語が、動画の中で耳にした瞬間にぱっと意味がわかった、という面白い体験も記しています。コメント欄では「信じられない」という反応に多くの「いいね」が集まり、語彙が 1.4 万語ある会社員から「月 10 冊でも無理だ」と指摘されると、投稿者本人は「食事と睡眠以外の時間はすべて読書に充てている」と返答していました。

1 年、児童書を楽しむ。 1 日 3,000〜4,000 語ほどのペースで、Roald Dahl の作品や The Wizard of Oz のシリーズを数冊、さらに Harry Potter を 3 巻まで読んだ人は、英語を頭の中で母語の中国語に訳さなくなり、そのまま情景が浮かぶようになったと振り返っています。Magic Tree House は好みに合わず途中でやめたそうです。単語は無理に暗記しようとせず、知らない単語が多すぎる本を読むときは、あらかじめソフトを使って本の中の単語にざっと目を通しておき、本文を読みながら思い出す方法をとっていました。めったに出てこない専門用語は読み飛ばし、端末は Kindle を使っています。「精読はするのか」という質問に対しては、「母語で本を読むときと同じ感覚で英語も読んでいる」と答えていました。

試験の点数は変わるか

試験のスコアがどう変化したかまで記録している例はあまり多くありませんが、そのうちの一つに、中英対訳版の Oxford Bookworms を活用した社会人の記録があります。文脈の中で何度も同じ単語に出会うことで語彙を身につけ、対訳と照らし合わせながら文法を整理していったそうです。かつては CET-4 にも合格できない状態でしたが、働きながら受験した大学院入試の英語で 55 点を取ったと報告しています(同じくらいの英語力の受験生は 45 点前後になることが多いそうです)。

何を読むか:レベルと語数

Oxford Bookworms の全体像。 ある投稿でまとめられていたデータによると、全 7 レベルの冊数と総語数は以下のようになっています。

レベル 冊数 総語数
Starter 27 冊 35,000 語
1 33 冊 140,000 語
2 34 冊 230,000 語
3 21 冊 276,000 語
4 18 冊 337,600 語
5 8 冊 220,900 語
6 8 冊 296,500 語

全レベルを合計すると約 154 万語になり、すべて読み通せばそれだけで 100 万語を超えます。

大人向けの入りやすいノンフィクション。 伝記シリーズの Who Was や、テーマ別に掘り下げる What Is シリーズを勧める声もありました。紹介されていたデータでは、Lexile 指数が約 500L〜800L で、語彙数が 2,000 語ほどあれば読み始められます。1 冊あたり約 95 ページ、語数は 7,000 語前後です。1 日 1,000 語のペースで読めば週に 1 冊、3 か月で 12 冊(約 10 万語)を読める計算になります。

無料の多読・多聴素材。 日本の学習者がよく利用している無料素材としては、Oxford Owl(ORT の一部の絵本が公開されており、音声つきのものは読み上げも可能)、Storyline Online(英語字幕つきの絵本の読み聞かせ動画)、Project Gutenberg、Free Graded Readers、Extensive Reading Central、News in Levels、English e-Reader などが挙げられていました。

続いた人に共通していたこと

  • 興味のある本しか読まない。 1 年間で 60 冊以上を読んだ人は、自分が心から興味を持てる本でなければ長く読み続けるのは無理だと振り返っています。
  • 聞きながら読む。 2 か月で 21 冊読んだ人も、1 年で 60 冊読んだ人も、音声を併用していました。後者の人は 1.1〜1.3 倍速に設定し、スマートフォンの誘惑を避けるためにあえて MP3 プレーヤーを使って聞いていたそうです。
  • レベル 6 の次は好きな本へ。 Bookworms を最終レベルまで読み切った人は、そのあとは自分の好きな一般の本へ移ることを勧めています。
  • 精読は多読の 1 割。 多読と精読のバランスについては、精読にかける量を多読の 10% 程度に抑えるというやり方もありました。
  • 楽しいことが続く理由。 1 年間児童書を読み続けた人が書いていたとおり、結局は「楽しい」と感じられることだけが長続きします。コメント欄にも、無理をするのをやめたら読書が楽しくなり、ある日ふと、すらすら読めるようになっている自分に気づいたという声がありました。

Solaread でできること

多読を続けようとするときに悩ましいのが、「読みたい本の難易度」と「いま自分が読めるレベル」がなかなか噛み合わないことです。Solaread では、約 2 分の語彙テストで現在の語彙レベルを測定し、あなたが知らなそうな単語の直後にだけ、同じ行の括弧内に短い日本語訳を添えて表示します。いちいち辞書を引いて立ち止まる必要がないため、Graded Readers より少し背伸びした本でも、多読に近い感覚で読み進められます。気になる単語があればダブルクリックで訳を確認でき、元の文ごと単語帳に保存しておくことも可能です。読む本は EPUB・TXT・PDF の各形式でご自身でご用意ください。Solaread では書籍の提供は行っていません。

よくある質問

英語多読で 100 万語読むにはどれくらいかかりますか?

1 分間に 100 語のペースで 1 日 30 分読む場合、約 1 年かかります。1 日 1 万語以上のペースで読んだ人の中には、半年で 200 万語に到達した例もあります。

多読は何から始めればいいですか?

Oxford Bookworms などの Graded Readers(段階別読み物)のなかから、知らない単語がほとんど出てこないやさしいレベルを選んで始めるのが一般的です。

Graded Readers を読み終えたら次は何を読みますか?

自分の好きなジャンルの洋書へ移る人が多いですが、レベル 6 まで読み終えたあとでも Harry Potter は難しく感じたという記録があります。